マスク男の秘密
「暗くて顔よく見えないから大丈夫だよ。マスク取っちゃいないよ」

「ちょっ、やめっ」

 私は彼のマスクを無理矢理はぎ取った。勢い余って彼を押し倒してしまった。薄暗い中にぼんやりと彼の顔が浮かび上がる。薄い唇をぎゅっと結んで、困った顔で目を泳がせている。

ちょっとかわいい。と思うが先か、彼のその唇に自分の唇を重ねていた。

「おーい図書室誰かいるかー?」

 先生の声が聞こえ、懐中電灯の明かりが図書室の中を照らした。

「はい、います!」

 私と橘くんは大慌てで起き上がり、ドアのもとへ駆け寄った。先生がドアを開けようとガタガタやっているが、やはり開かないらしい。

「ふたりとも離れてろ」

先生は強引にドアを蹴飛ばした。

< 10 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop