マイナス余命1日 ※修正版
勉強漬けの生活の中、私は自分の趣味を見つける事ができた。
塾に入ってからは、小学校の教科書でしか活字を読めなかった時に比べて、遥かに多くの文章に目を通した。
それによって、文を読む行為をしている時が、一番自分の心が癒される事に気づいた。

それから、国語の模試で、いじめに遭った小学生が懸命に生きようとしてる姿を題材にした小説の存在を知った。
続きが気になり、こっそりと学校の図書室で借りて全てを読んだ。

(こんな小説を私も書いて、今の自分の様に悩んでいる人の助けになりたい)

人生で初めて夢というものを持つことができたのだ。
ちょっとの癒しもありながらも、大変な受験生生活を潜り抜けて、帝東学園の一般入試をトップで潜り抜け、中等部に奨学生として、全額無料で入学する事ができた。
思い出すだけなら「懐かしい」の一言で済ませられる。
だが、当時は何か問題を解いていないと吐き気に悩まされていたので、やはりそれなりに辛い出来事だったのだろう。
さて。そんな経緯で入学した中学校。
全額無償という有難すぎる特典のおかげで、母も私の学費の心配をする必要が無くなった。
その結果、母は残業が少ない職場へと移ることができた。
大好きな母との時間も増えたこともあり、最初の一年間は、とても平和に毎日を過ごすことができた。

ちなみに、クラスメイト達のほとんどは、私の生活水準なんかよりも遥かに高い。
鞄や洋服はブランド物で年に一度の海外旅行は当たり前。
飛行機のエコノミークラスの狭さを体験したことも無い、年収5000万円以上の家庭で育った、良家のおぼっちゃんお嬢ちゃんばかり。
彼らが交わす会話の殆どが宇宙語の様に概念すら分からないものばかり。
だとしても、みじめに感じていた小学生時代とは違う。
奨学生として、やっと巡り合った素晴らしい「夢」に向かう一人の人間として、黙々と机に向かっていれば、私は幸せだった。

それなのに、どうして奴は現れてしまったのだろう。
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