マイナス余命1日 ※修正版
そういえば……と思い出した。
入学式の時だけは、確かに理事長の話があった。
でもそれ以外、表舞台でほとんどみたことなかった。
てっきり、表に出るのは式関係だけなのかと思っていたけど、卒業式にもいなかったからおかしいなとは、ちょっとだけ思ってはいた。

「と言う訳で、僕がこの学園にいる間、僕がここの管理任されたってわけ」
「ちょ……ちょっと待て」
「何?」
「どういう訳であんたがここの管理者になれるっていうの」
「だって僕、普通じゃないから」

(あっさり言ったよ、こいつ)

日本人なら謙虚さも少しはあって良いのでは、ないだろうか。
なんで自信満々に言えるのさ、自分が特別だってこと。

「だからさ、ここ、君にあげるよ」
「は?」
「僕の彼女になった特典」
「特典って……」
「君の事だから、君に何かしらメリットがないと僕と付き合ってくれないでしょ?」

(それどころかシェルターに入って門前払いしたい)

「だから特典。こんな特典を君の様な子にあげるお人よし、僕くらいじゃないかな」
「私の様な子とは?」
「キューピーの読書狂い」

読書狂いは当たってるから大目に見よう。

「ほんと好きね、それ」

 いい加減飽きないのだろうか。

「だって、僕の初恋だもの」

は?

「あのぷっくりとしたすべすべの肌に、愛らしいフォルム。何もかもが完璧な姿に惚れない男は男じゃない!」

(そもそもキューピーって女性ですか?)

という突っ込みが頭に浮かんだが、目をぎらぎらさせて

「ね、ここ全部好きにしていいから」

と言う、彼の特典だけが、とても魅力に感じた。
なので、私は彼がどんな対価を求めてこようと、最高級の特典によって我慢をしてやろうと心に決め、返事の代わりに

「とっととその鍵渡しなさいよ」

とエレベーターを動かすのに使った鍵を奪った。
投げやりとも取れるその返事を聞いた奴は、鍵ごと私を強く抱きしめた。
さっき嗅いだ時には感じなかった、汗の匂いがまじっていたのは、きっと私の汗であって彼の汗であるはずはないだろう。
抱きしめられた後に制服に手形の水分の痕がついていたけど、奴が汗だらだらになるなんて、そんなみっともない真似は見せないだろう。
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