マイナス余命1日 ※修正版
春から夏にかけての二人の関係からは、とても考えられないくらい、奴は私を宝物のように扱ってくれた。
一方で、私の奴に対する扱いは、10分の1程しか丁寧さはないと、文句を言われることも少なからずあった。
でも、当社比……ならぬ当私比でいうならば。
(最初は丁寧さのかけらなど存在しなかったのだから大目に見て欲しいものだ)
と、笑いながら言ってやった。
「ね、デートしようよ」
「夏バテだから嫌だ」
「暑くない所なら良いんじゃない?軽井沢とかどう?僕の別荘あるし」
中学生は映画とか水族館といった、室内のデートスポットでしょ……。
桁外れのおぼっちゃまにとってはちょっと遊びに行くというジャンルに軽井沢の別荘という選択肢存在していたのだ。
「別荘って事は泊まり?」
「だめかな……?」
手を口に当てながらためらいがちに何かを言うのは癖なのか……。
そう考えた時、かつて所々であった、同じような仕草の時に発した台詞を思い出しぴんときた。
この癖は、言い出しづらいけど思い切って何かを言う時に、無意識にしてしまう癖なのだと。
「もしかして……何度か誘おうとしてくれた?」
「……断られるのが怖くて」
「何でよ」
「何でって、雪穂ちゃん僕の事、まだそんなに好きじゃないでしょ?」
「嫌いだって言ってた相手に好きだ付き合えと脅してきたのはどこの誰よ」
「あれは、まだ付き合う前だったからできたけど」
「付き合う前ならできるもんなの?」
普通付き合った後の方が、恋人という名の鎖があるだけに、無理も通しやすそうな気がするけど……男は違うのだろうか?
「だって、せっかく付き合えたのに別れるなんて……こんな幸せを壊す事したくなかったんだ」
そう言うと、奴は今度はしっかり両手で私の両手を握る。
「僕と、軽井沢に行ってください」
私達は中学生である。プロポーズの様にひざまずかれて言われたこのセリフの、本当の意図に気づかない程、私は鈍感ではない。
保護者がいないとダメなんじゃないか。
友達同士のレジャーとしてなら良いんじゃないか。
色々な言葉を頭に巡らせるが、私は自分の疼く胸に手を当てて覚悟を決める。
言葉などいらない。
一回大きく頭を立てに振った。
どんな表情をして私の言葉を受け取ったのかは知らない。
何故ならば、既に私の顔は窒息しそうになるくらい彼の胸にうずめられていたから。
でも。
夏休みの最後の週。
この時既に体調がおかしくなっていた私は、行けない可能性も十分に考えていた。
そして、その予感は結局あたってしまった。
一方で、私の奴に対する扱いは、10分の1程しか丁寧さはないと、文句を言われることも少なからずあった。
でも、当社比……ならぬ当私比でいうならば。
(最初は丁寧さのかけらなど存在しなかったのだから大目に見て欲しいものだ)
と、笑いながら言ってやった。
「ね、デートしようよ」
「夏バテだから嫌だ」
「暑くない所なら良いんじゃない?軽井沢とかどう?僕の別荘あるし」
中学生は映画とか水族館といった、室内のデートスポットでしょ……。
桁外れのおぼっちゃまにとってはちょっと遊びに行くというジャンルに軽井沢の別荘という選択肢存在していたのだ。
「別荘って事は泊まり?」
「だめかな……?」
手を口に当てながらためらいがちに何かを言うのは癖なのか……。
そう考えた時、かつて所々であった、同じような仕草の時に発した台詞を思い出しぴんときた。
この癖は、言い出しづらいけど思い切って何かを言う時に、無意識にしてしまう癖なのだと。
「もしかして……何度か誘おうとしてくれた?」
「……断られるのが怖くて」
「何でよ」
「何でって、雪穂ちゃん僕の事、まだそんなに好きじゃないでしょ?」
「嫌いだって言ってた相手に好きだ付き合えと脅してきたのはどこの誰よ」
「あれは、まだ付き合う前だったからできたけど」
「付き合う前ならできるもんなの?」
普通付き合った後の方が、恋人という名の鎖があるだけに、無理も通しやすそうな気がするけど……男は違うのだろうか?
「だって、せっかく付き合えたのに別れるなんて……こんな幸せを壊す事したくなかったんだ」
そう言うと、奴は今度はしっかり両手で私の両手を握る。
「僕と、軽井沢に行ってください」
私達は中学生である。プロポーズの様にひざまずかれて言われたこのセリフの、本当の意図に気づかない程、私は鈍感ではない。
保護者がいないとダメなんじゃないか。
友達同士のレジャーとしてなら良いんじゃないか。
色々な言葉を頭に巡らせるが、私は自分の疼く胸に手を当てて覚悟を決める。
言葉などいらない。
一回大きく頭を立てに振った。
どんな表情をして私の言葉を受け取ったのかは知らない。
何故ならば、既に私の顔は窒息しそうになるくらい彼の胸にうずめられていたから。
でも。
夏休みの最後の週。
この時既に体調がおかしくなっていた私は、行けない可能性も十分に考えていた。
そして、その予感は結局あたってしまった。