マイナス余命1日 ※修正版
そんなことを考えながら、布団に入った瞬間

(あ、忘れてた……)

ほんの1か月前から強制させられている習慣の事を、何とか思い出した。

(きついな……)

すでに、重く感じるようになった体ではあったが、どうにか鞭打つように起き上がらせ、水道水を飲もうと蛇口を捻った。
その時だった。
錆び付いたブリキの扉が、激しく音を立てたのは。

「お母さんーお客さんー……」

返事はなかった。

(仕方がない……)

自分のせいで母に無理を強いてしまっている自覚は十分にある。
だから、母となかなか会えない日々は、あと少し我慢しなくてはいけないことも、ちゃんと心得ている。

居留守をしたいと思っても、玄関と台所は繋がっているおかげで、水をちょうど流した音はおそらく外に丸聞こえ。
イライラをぶつけるように、水道の蛇口を強めに閉めてから、開けてはいけない扉を内緒で開けるかのようにそっと開けてみた。
もちろん、母から言われた通り、チェーンロックはしっかり閉めたまま。
その瞬間だった。
扉が、強い力で引っ張られたのは。

(な、何事!?)

同時にチェーンロックによって生じた、微かな隙間から、様々な色の薔薇が生えてきた。

「ええと……?」
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