お願い、私を見つけないで 〜誰がお前を孕ませた?/何故君は僕から逃げた?〜
Side朝陽
山田さんに案内されて、俺たちは今、屋敷の廊下を歩いている。
中の様子は、外国のゾンビゲームの舞台とよく似ている。
こんな場所、テーマパークのお化け屋敷か、ゲームの中くらいにしかないと思っていた。
一面レッドカーペットが敷かれていて、廊下には高そうな絵画や美術品が並んでいて、ぶつからないかヒヤヒヤした。
今1番、ここを歩かせたら危険な人物……葉はといえば、藤岡にがっしり抱えられている状態。
じーっと初めて見るものへの興味はあるものの、車を見た時よりずっと大人しくなっていた。
そんな藤岡と言えば。
あの悠木先生の記事を俺に見せてから、様子がまた変わった。
ずっと、難しい顔をして何かを考えている。
悠木先生が、あんなすごい成果を持っていた……ということを、俺は知らなかった。
少なくとも日経新聞などは一通り目を通しているし、朝のニュースは欠かさず見ていた。
経営を任されている以上、世の中の情報を集めるのは必要なことだから。
それは、藤岡も同じ。
でも、藤岡のように、海外のWEBメディアまではさすがに確認出来ていない。
藤岡が、もともと情報収集の才能があるのも、事実だろう。
SNS上をネットサーフィンしていると、意外なニュースに辿り着くこともあるとも、藤岡は言っていた。
でもあの記事は、それで見つけたわけではない気がする。
悠木先生の名前は本当に小さくしか書かれていない。
俺だったら、あの小ささを偶然見つけただけだったら……印象的なニュースの内容はうっすら覚えていても、人の名前なんか、覚えられない。
でも藤岡は、少し時間がかかったとは言え、悠木先生を思い出した。
……それが意味するのは……何かあるのではないか?
俺は考えてみたら、藤岡のことも何も知らない。
凪波の時も、そうだ。
いつも、何も知らないまま、何かが起きてしまう。
リムジンの中でのあれも……だ。
藤岡はどうして、あんな……。
気になって、藤岡の唇についつい目をやってしまう。
「海原、どうしたの?」
「え?」
「さっきから、ジロジロ見て……変なものでも、ついてる?」
「いや、別に……」
「そう」
「……ああ」
会話が、続かない……。
どうしよう。
俺、どうやって藤岡と話せばいいんだろう。
藤岡が考えていることが、今全くわからない。
あ……そうだ……。
……凪波は?
……あいつが何を考えているか……考えたこと……あったか?俺は……。
ふと、そんなことが頭を過ぎってしまう。
しかし今は、そんなことを気にしている場合じゃない。
俺は、考えを振り払うように、早歩きになった。
その時だった。
ぴたり、と山田さんが立ち止まり、俺がちょっと行き過ぎてしまう。
「山田さん……?」
俺が振り返ると、山田さんは、大きな絵画の前に立っていた。
そして……
「お連れいたしました」
絵に向かって、一礼しながら話しかけていた。
その絵は、真っ赤な薔薇の花の上に、雪が降り注いでいる様子が描かれていて、山田さんの声がけの後のほんの数秒後、その絵が扉のように開いた。
まるで本の表紙を開くかのように。
山田さんに案内されて、俺たちは今、屋敷の廊下を歩いている。
中の様子は、外国のゾンビゲームの舞台とよく似ている。
こんな場所、テーマパークのお化け屋敷か、ゲームの中くらいにしかないと思っていた。
一面レッドカーペットが敷かれていて、廊下には高そうな絵画や美術品が並んでいて、ぶつからないかヒヤヒヤした。
今1番、ここを歩かせたら危険な人物……葉はといえば、藤岡にがっしり抱えられている状態。
じーっと初めて見るものへの興味はあるものの、車を見た時よりずっと大人しくなっていた。
そんな藤岡と言えば。
あの悠木先生の記事を俺に見せてから、様子がまた変わった。
ずっと、難しい顔をして何かを考えている。
悠木先生が、あんなすごい成果を持っていた……ということを、俺は知らなかった。
少なくとも日経新聞などは一通り目を通しているし、朝のニュースは欠かさず見ていた。
経営を任されている以上、世の中の情報を集めるのは必要なことだから。
それは、藤岡も同じ。
でも、藤岡のように、海外のWEBメディアまではさすがに確認出来ていない。
藤岡が、もともと情報収集の才能があるのも、事実だろう。
SNS上をネットサーフィンしていると、意外なニュースに辿り着くこともあるとも、藤岡は言っていた。
でもあの記事は、それで見つけたわけではない気がする。
悠木先生の名前は本当に小さくしか書かれていない。
俺だったら、あの小ささを偶然見つけただけだったら……印象的なニュースの内容はうっすら覚えていても、人の名前なんか、覚えられない。
でも藤岡は、少し時間がかかったとは言え、悠木先生を思い出した。
……それが意味するのは……何かあるのではないか?
俺は考えてみたら、藤岡のことも何も知らない。
凪波の時も、そうだ。
いつも、何も知らないまま、何かが起きてしまう。
リムジンの中でのあれも……だ。
藤岡はどうして、あんな……。
気になって、藤岡の唇についつい目をやってしまう。
「海原、どうしたの?」
「え?」
「さっきから、ジロジロ見て……変なものでも、ついてる?」
「いや、別に……」
「そう」
「……ああ」
会話が、続かない……。
どうしよう。
俺、どうやって藤岡と話せばいいんだろう。
藤岡が考えていることが、今全くわからない。
あ……そうだ……。
……凪波は?
……あいつが何を考えているか……考えたこと……あったか?俺は……。
ふと、そんなことが頭を過ぎってしまう。
しかし今は、そんなことを気にしている場合じゃない。
俺は、考えを振り払うように、早歩きになった。
その時だった。
ぴたり、と山田さんが立ち止まり、俺がちょっと行き過ぎてしまう。
「山田さん……?」
俺が振り返ると、山田さんは、大きな絵画の前に立っていた。
そして……
「お連れいたしました」
絵に向かって、一礼しながら話しかけていた。
その絵は、真っ赤な薔薇の花の上に、雪が降り注いでいる様子が描かれていて、山田さんの声がけの後のほんの数秒後、その絵が扉のように開いた。
まるで本の表紙を開くかのように。