お願い、私を見つけないで 〜誰がお前を孕ませた?/何故君は僕から逃げた?〜
Side悠木

「私は、改めて彼女にこの実験の危険性を伝えた。

私たちの体は、脳という、2キロにもいかない脂質、タンパク質、アミノ酸でできた柔らかい、豆腐のようなもので全て支配されている。

考えることだけじゃなく、こうして……見たり聞いたり話したりといった五感や、こうして二本足でバランスよく立てるという、平衡感覚……そして呼吸や循環といった、生きるための基本的な体の機能をも、脳は司っている。

司令塔、という言葉を使われるだけのことはある。

人間という存在を定義しているのは、まさに脳だ。

古代エジプトの世界では、脳は鼻水を作るためだけに作られた器官と考えられてたそうだが……信じられるかね?

かの天才、古代ギリシャに生を受けたヒポクラテス氏が脳の素晴らしさを発見してくれなければ、一体どれだけの損失が起きていたのか……。

無知、ということがいかに重罪に値するのか、この事例からよく分かるだろう……?

……いけないね。

また私の悪い癖が出てしまった。

さて……どこまで話をしたかな」
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