お願い、私を見つけないで 〜誰がお前を孕ませた?/何故君は僕から逃げた?〜
Side朝陽
突然すぎる想定外の問いかけがされると、硬直する人と、滑らかに答えられる人の2種類いると思う。
俺は、間違いなく前者。
「……急に……何だよ……」
「……すまない……」
今まで、俺に敵意剥き出しだった一路が、初めて俺に謝罪……というものをした。
「……気持ち……悪りぃな……」
心が、落ち着かない。
色々と。
俺は、むず痒さを感じて、頭をぽりぽりかいてしまう。
「知らないんだ」
一路がまた、ぽつりと話す。
気のせいだろうか、少しずつ、声の芯は戻ってきている気がする。
こんな話し方を……俺が大人気もなく夢中になって見た、アニメの主人公がしていたな……と思い出す。
もちろん主役は、目の前にいること男。
自分の決断に対して自信を失っている……そんな場面だった。
俺が、個人的に気に入っているシーンだったので、印象に残っている。
「……何を?」
「凪波のこと。僕は、きっと……何も知らない」
「そんなことないだろ……?」
少なくとも、俺が知らない10年間の半分を……お前は知っているはずだろう?
「お前ら……5年は……一緒にいたんだろ」
自分で発した言葉に、胸を抉られる。
5年は、中学生が高校生になれる時間。
高校生が大学生になれる時間。
……人生を考える中で、やはり大きい年数だ。
そんな時間を、2人が過ごしたと思うと、胸がざわついてしまう。
「ああ。……5年も、だ」
一路は、視線をテーブルの上のケーキに移す。
視線の先にあるのは、小さな苺がちょこんと乗った、普通のショートケーキ。
それを見ながら、一路は言った。
「凪波が、好きなケーキは何?」
「……一路……?」
様子がおかしい。
「誕生日はいつ?血液型は?演技以外で好きだったことは?……僕は、何も、教えてくれなかったんだ!!!!」
一路は、鎖で縛られた両手を、そのままどんっと机に叩きつける。
その衝撃で、ショートケーキが傾き、苺がころりと離れる。
まるで、体から首がもげるかのような……そんな動きをした。
「なあ、海原……僕は……凪波のために……ここまで頑張ったんだ……」
「一路、おい、落ち着け!!」
一路は、テーブルの上のお菓子を次々と潰していく。
まるでそれは……。
「彼女が望むこと……喜ぶこと……何だってしてあげたかった。したかった!だから僕は……!!」
自分の甘い記憶を、全否定するかのような……。
「一路!それ以上するな!」
すでに一路の鎖からは、血が垂れていた。
テーブルの上のキラキラなケーキには、血痕が飛び散っている。
俺は、一路の……自分を傷つけることも厭わない、全身の叫びを抑え込む為に、無理やり自分の胸に抱き寄せ、一路がこれ以上動かないようにした。
「落ち着けよ……落ち着いてくれよ……」
そんな姿を……俺に見せないでくれ。
頼らないでくれ……。
叫ばないでくれ……。
傷つけないでくれ……。
俺だって……本当は……。
突然すぎる想定外の問いかけがされると、硬直する人と、滑らかに答えられる人の2種類いると思う。
俺は、間違いなく前者。
「……急に……何だよ……」
「……すまない……」
今まで、俺に敵意剥き出しだった一路が、初めて俺に謝罪……というものをした。
「……気持ち……悪りぃな……」
心が、落ち着かない。
色々と。
俺は、むず痒さを感じて、頭をぽりぽりかいてしまう。
「知らないんだ」
一路がまた、ぽつりと話す。
気のせいだろうか、少しずつ、声の芯は戻ってきている気がする。
こんな話し方を……俺が大人気もなく夢中になって見た、アニメの主人公がしていたな……と思い出す。
もちろん主役は、目の前にいること男。
自分の決断に対して自信を失っている……そんな場面だった。
俺が、個人的に気に入っているシーンだったので、印象に残っている。
「……何を?」
「凪波のこと。僕は、きっと……何も知らない」
「そんなことないだろ……?」
少なくとも、俺が知らない10年間の半分を……お前は知っているはずだろう?
「お前ら……5年は……一緒にいたんだろ」
自分で発した言葉に、胸を抉られる。
5年は、中学生が高校生になれる時間。
高校生が大学生になれる時間。
……人生を考える中で、やはり大きい年数だ。
そんな時間を、2人が過ごしたと思うと、胸がざわついてしまう。
「ああ。……5年も、だ」
一路は、視線をテーブルの上のケーキに移す。
視線の先にあるのは、小さな苺がちょこんと乗った、普通のショートケーキ。
それを見ながら、一路は言った。
「凪波が、好きなケーキは何?」
「……一路……?」
様子がおかしい。
「誕生日はいつ?血液型は?演技以外で好きだったことは?……僕は、何も、教えてくれなかったんだ!!!!」
一路は、鎖で縛られた両手を、そのままどんっと机に叩きつける。
その衝撃で、ショートケーキが傾き、苺がころりと離れる。
まるで、体から首がもげるかのような……そんな動きをした。
「なあ、海原……僕は……凪波のために……ここまで頑張ったんだ……」
「一路、おい、落ち着け!!」
一路は、テーブルの上のお菓子を次々と潰していく。
まるでそれは……。
「彼女が望むこと……喜ぶこと……何だってしてあげたかった。したかった!だから僕は……!!」
自分の甘い記憶を、全否定するかのような……。
「一路!それ以上するな!」
すでに一路の鎖からは、血が垂れていた。
テーブルの上のキラキラなケーキには、血痕が飛び散っている。
俺は、一路の……自分を傷つけることも厭わない、全身の叫びを抑え込む為に、無理やり自分の胸に抱き寄せ、一路がこれ以上動かないようにした。
「落ち着けよ……落ち着いてくれよ……」
そんな姿を……俺に見せないでくれ。
頼らないでくれ……。
叫ばないでくれ……。
傷つけないでくれ……。
俺だって……本当は……。