地味男はイケメン元総長~番外編集~
 だから触れるだけのつもりだった唇を少し()むようにして、それからチュッとリップ音を鳴らし顔を離した。

 それでもまだ顔は近い状態。
 そのまま俺はニヤッと笑い言った。

「付き合ってる男女はこういう事もするんだぜ?」

 分かってるんだよな? と、自分でも分かる程意地悪く笑う。


 沙良は驚いた顔のまま固まっていたけれど、徐々に眉尻が下がり顔が真っ赤になっていく。

「なっ、え? ええぇぇぇ?」

 そのまま泣きそうな顔になったので、俺は流石に慌てた。


 ヤバい、ちょっとやり過ぎたか!?


「あ、えっと……。嫌だったか?」

 壁から手を離し、沙良の目の前にしゃがんで下から覗き込むように彼女の顔を見た。

 沙良は泣きそうな表情のまま俺の質問に答える。


「……嫌、ではなかった」

 その言葉にホッとする。
 そして――。

「でも、恥ずかしい。……心臓がドキドキして、鳴りやまないよぉ……」

 泣きそうな顔でそんなことを言われたから、俺の理性は吹き飛びそうだった。
< 31 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop