恋愛中毒
 依枝奈はゆっくりと口を開いた。
 中学1年の秋から、依枝奈はイジメを受けていた。クラスメートからは口をきいてもらえず、教科書はボロボロだった。お弁当は隠されたり、ゴミを入れられたりがほぼ毎日だ。
 そんな中、依枝奈は人気の無い校舎裏に呼ばれていた。相手は5人。強行突破など無理に等しかった。

「よく、学校来れるよね」

「……」

 依枝奈は手を強く握った。手は震えて顔は下を向いている。

「友達の彼氏とっておいてなんで平気な態度とれるわけ?」

「さすが、クズだよね。人の気持ち考えたことあんの?」

「自分が可愛いとか思ってんのかよ、ブスっ!」

 何を言われても黙っていた。今まで弁解しても彼女達にはまるで伝わらなかった。そればかりか激しくなる一方だ。

「なんとか言えよ!」

 1番前にいた女子が手を上げて、依枝奈が目をつむるとバチンと乾いた音と共に頬に衝撃が走った。叩かれたのだと、数秒してから分かった。
 なんで自分がこんな目に合わなくてはならないのだろう。何も悪い事はしていない。
 浴びる罵声、痛む頬。ここで泣いたら負けだと必死に涙を堪えた。握った手は一層力を増す。
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