恋愛中毒
 さすがに友達だと思っていた人間から受けるイジメは辛かった。友達だから余計に彼女達の怒りを買ってしまった訳で、世の中とは上手くいかないことばかりである。誤解だと何回も弁解しても分かって貰えず、関係が壊れて今に至る。依枝奈は人間関係の脆さを初めて知った。

「なんとか言えよッ!」

 強い声で言われて一瞬顔を上げると正面から水を被った。髪はもちろん、制服までびしょ濡れだ。
 1人がバケツを蹴ると全員、飽きた様に帰っていった。

「……あんた達の方がクズよ」

 依枝奈の呟いた声は誰にも届かず空気に溶け込む様に消えた。
 水をかけられたり、直接何かをされたのは初めてだ。今までで1番酷い。
 依枝奈はお腹が鳴るのと同時にポケットに忍ばせてある小銭を手に取った。お弁当が食べれないのを考慮して入れておくのだ。お財布を持ってくると鞄を荒らされた時に危ないので持ち歩かない。
 放心状態のまま玄関から入ると生徒の視線が痛いが依枝奈には気にしてる余裕が無かった。すぐ近くにあるパン購買を除くともうパンは1つも残っていなかった。
 お金だけを握りしめると涙が滲んだ。
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