スノーホワイトは年下御曹司と恋に落ちない
そんな焦りの気持ちが出すぎて、つい強引な方法で迫ってしまった。
気持ちよく酔っている陽芽子にキスをしたいと思ったときは『嫌われたくない』と思って耐えたのに、他の男と『また明日』と約束していることには耐えられなかった。激しい嫉妬心を衝動的にぶつけてして無理矢理口付けてしまうほど、自分の感情を抑えられなかった。
後から頭を冷やして考え、理性的な判断が出来なかったことを猛烈に後悔した。嫌われてもおかしくないことをしてしまった自分をひたすらに恨んだ。
けれど陽芽子は、啓五の過ちを受け止めてくれた。ちゃんと怒って、叱ってくれた。啓五の感情を否定せず、しっかり考えたいと言ってくれた。
それだけで十分――なんて思えない。
ますます手に入れたいと思ってしまう。どんどん惹かれていってしまう。告白の返事を考えた結果、断られたらどうしよう、と本気で悩むほどに。
「副社長は、白木のことを認めてくれるんですね」
壁に寄り掛かったまま陽芽子の姿をじっと見つめていると、隣から春岡の声が聞こえてきた。顔を上げると、彼は何故か嬉しそうに笑っている。
陽芽子と春岡は付き合いが長いらしく、言葉がなくても意思の疎通がとれるほどの信頼関係があるように見える。今の啓五にはそれが最も面白くない事実だが、同時に羨ましくもあった。陽芽子から絶対の信頼を向けられている春岡が、羨ましくて仕方がない。
きっと同じ仕事をしていて、しかも完璧に仕事が出来る者同士だから、話も合うのだろうと思う。
「それはもちろん。彼女、仕事出来るじゃないですか」
「いいえ、全然?」
ところが春岡は、啓五の称賛を即答で否定してきた。あまりにも軽く、あっさりと。