スノーホワイトは年下御曹司と恋に落ちない
スノーホワイトは恋に堕ちる
「それじゃ、お疲れさまでしたー!」
「室長、お熱い夜をー!!」
「ひゅーひゅー!!」
「ほんとそれ、もういいから……! 気を付けて帰ってよー!?」
好きなだけ食べて飲んで大騒ぎした部下達や春岡と別れ、陽芽子もようやく息をついた。
啓五にはただの慰労会だと聞いていたのに、あっさりと自分たちの関係を話してしまうのだから、焦りもするし疲れもする。
職場で改めて報告する手間は省けたが、明日以降、部下たちにからかわれる材料が増えてしまった。そう考えると仕事自体はこれから先も何も変わらないのに、照れと恥ずかしさを感じてしまう。
「お熱い夜を、って言われたな?」
「啓五くんも本気にしなくていーの」
隣にやってきて楽しそうに手を握ってくる恋人の呼び方を『副社長』から『啓五くん』に戻す。それだけで嬉しそうな顔をするのだから、啓五の幸せは安いものだ。
繁華街からさほど離れていない啓五のマンションに辿り着き、上層階にある彼の部屋へ入ると、上着を脱いだ啓五に
「そういえば、住むとこってここでいい?」
と訊ねられた。
「え……一緒に住んでいいの?」
「当たり前だろ。別居なんて一日もしないからな。そうじゃなくて、俺が聞いてるのは場所の話」
少し不機嫌そうな顔をされて、改めて『近い将来この人と結婚するんだなぁ』と思う。
本当はまだ実感がない。だが陽芽子が使うタオルを準備したり、酔い覚ましの水を用意してくれたりと、甲斐甲斐しく動き回る啓五はもうご機嫌に戻っている。その姿を見るだけで、陽芽子と過ごす日々を楽しみにしてくれていることは良くわかる。
「啓五くん、私より浮かれてる?」
「そりゃ、浮かれるだろ。結婚したら俺が陽芽子を独占できる。毎日一緒にいられるし、陽芽子を甘やかしてやることも出来る」
「あの……それ、言ってて恥ずかしくない?」
「いや、全然?」