スノーホワイトは年下御曹司と恋に落ちない
差し出された啓五の手を取り、ゆっくりと立ち上がる。そのまま導かれた先は啓五のベッドルームだった。
「今夜は、優しくするから」
以前、無理矢理キスをしたときのことを反省しているのだろう。あるいはこの前、陽芽子に愛を教えるためだと言って、寝落ちするまで何度も抱いたことを言っているのかもしれない。
ベッドに座った啓五に腕を引っ張られ、胸の中に身体を引き込まれる。顔を上げて薄明るい中で見つめ合うと、そのまま唇を重ねられた。優しく、丁寧に、お互いの温度を少しずつ確かめるように。
「いつも優しくしてくれないと困るよ?」
「じゃあ『今夜から』優しくする」
離れた唇の隙間でくすくす笑うと、啓五はすぐに自分の言葉を訂正してきた。
そのままパジャマのボタンを外され、晒された鎖骨に鼻を近付けてすんすんと匂いを確かめられる。まるで動物が自分の番を探しているようだ。
「陽芽子の匂いがする。でも石鹸は俺が使ってるやつだ」
「啓五くん、くすぐったいよ」
肌の上にかかる息がくすぐったくて、そっと文句を言う。するとふっと笑った啓五に再び唇を奪われた。
キスの合間に『ごめん』と笑われるが、手の動きは繊細な硝子細工に触れるように優しくて、服を剥ぎ取る動作も丁寧だ。むしろじれったいと感じてしまうほどに。
「……可愛い」
肌に触れられると、また身体が熱を持つ。身体中を撫でる優しい指の動きは、激しい行為よりもよほど情熱的に感じてしまう。繰り返されるキスも重ねられる言葉も、優しすぎるほどに甘ったるい。
陽芽子の身体をじっと見下ろしていた瞳と目が合う。黒目より白目の割合が大きく、相手に鋭い印象を与える『三白眼』――真珠のように綺麗な白と黒曜石のように深い黒の瞳。