スノーホワイトは年下御曹司と恋に落ちない

 愛想笑いを浮かべながら、陽芽子も怜四の様子を観察する。

 朝礼時に遠目で見るだけではわからなかったが、やはり怜四も美男美女が居並ぶ一ノ宮に相応しい色男である。

 顔や身体の造形は啓五とは似ていないが、彫が深くくっきりとした目鼻立ちと優雅な佇まいは、まさに完璧。圧倒されるほどの存在感の中には、老若男女を問わず相手を魅了するような色香さえ感じる。

 すらりと細身の啓五と異なり、怜四はがっしりとした体格で身長もあるため、いかにも大男と言った風体だ。

 タイプが違う色男が社長と副社長だなんて贅沢な会社だなぁ、と呑気な感想を抱きながら、コールセンター業務の話や陽芽子の生い立ちの話をする。

 やがて啓五の話になったので、恥ずかしい事情をまとめてカットして、啓五との馴れ初めを語った。

 最初は笑って聞いていた怜四だが、気付けばその表情はごく真面目なものに変化していた。

「陽芽ちゃんは、啓五の眼をどう思う?」

 長い足を組み替えた怜四が、真面目な声のトーンと真剣な表情で陽芽子に意外な事を訊ねてきた。その質問の意図がわからず、陽芽子は再び首を傾げてしまう。

「えっと……? め……ですか?」
「そうそう、啓五の瞳。ほら、アイツ眼つき悪いだろ?」

 陽芽子が話しやすいよう考えてくれたのか、口調は少し柔らかなものに変化した。しかし質問されている内容は変わらない。

(どう、って……)

 回答をじっと待つ怜四に、陽芽子も悩んでしまう。質問の仕方を変えて内容を掘り下げられても、怜四が何が聞きたいのか、どう答えるのが正解なのかわからない。

 悩みすぎた陽芽子の口からは、つい低い唸り声が漏れてしまう。

「うう~ん? ちょっと猫っぽい……?」
「猫?」
「ええと……野性的? 目力があると言うか……?」
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