スノーホワイトは年下御曹司と恋に落ちない

(見つめ合ったらみんな好きになっちゃいそうで心配……は、言わない方が良いよね。たぶん)

 そう思ってしまうのも陽芽子の本心ではあるが、怜四に言ったらからかわれてしまいそうだ。だからそれは心の内に秘めておくことにする。

 怜四が何を知りたくてそんな質問をしてきたのかわからない以上、他にどうにも表現のしようがない。別の言い方がないものかと言葉を探していると、コーヒーカップをソーサーに戻した怜四が納得したような頷き声を零した。

「……ああ、なるほどな。目力がある、は良い表現だ」

 それから二、三度頷いて安心したように笑うので、陽芽子もそれ以上の言葉は必要がないのだと悟った。

「陽芽ちゃんは、啓五の『眼』がなんて言われてるのか知らねぇのか」

 ふと怜四が呟いた言葉に、陽芽子は再び思考を奪われた。やっぱり意味はわからない。けれどわからないからこそ、つい良くない想像が脳裏を掠める。

 嫌な鼓動が鳴り始める前に視線を上げ、思いついてしまった疑問を恐る恐る確認する。

「……啓五さん、眼に病気があるんですか?」
「え? あ、いや、違う違う。そうじゃなくて……」

 陽芽子の言葉に苦笑した怜四が、目の前でひらひらと手を振った。

 辛い事実を隠されるのかと身構えたが、怜四の言葉は本当にそういう意味ではなかったらしい。そっと微笑んだ怜四は、陽芽子に内緒話を聞かせるように組んでいた脚を解いて前屈みになった。

「経営者ってのは、往々にして風水とか占いとか験担ぎを重視すんだよ。万事万端整ったら、最後の最後は神頼みってヤツ? 縁起とか吉凶ってのを異様に気にするんだよなぁ」
「……へ?」

 どう考えても啓五の眼の話とかけ離れた説明をされた気がして、つい怪訝な表情を浮かべてしまう。
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