スノーホワイトは年下御曹司と恋に落ちない

 叔父と甥という関係の割には、啓五と怜四は意思の疎通が取れている気がする。怜四は啓五をからかっているだけで本気で苛めようと思っていないようだし、啓五もそんな怜四に本気で怒っているようには見えなかった。

 だからもし誤解があっても、急に殴り合って喧嘩をしたりはしないだろう。それでも普段から陽芽子のことを最優先に考えてくれる啓五が、何か良くない勘違いをしてしまった空気は感じ取った。

 困惑している啓五のスーツの袖をくいくいと引っ張り、こちらを向いてもらう。

 焦ったような表情をしている啓五に、陽芽子はつい真剣な声で自分の感情を伝えてしまった。

「私、啓五くんの味方だから!」
「……は?」
「啓五くんの眼も、ちゃんと好きだからね!?」
「えっ……あ、ありがとう?」

 後から冷静に考えたら結構な大胆告白をしてしまったが、その時の陽芽子はただ自分の想いを伝えずにはいられなかった。陽芽子を懸命に愛してくれる啓五に、今この瞬間、どうしても気持ちを返したくなった。

 だから真面目な表情で、真面目な気持ちを伝えたつもりだったのに。少しの間を置いて言葉の意味を理解したらしい啓五が、

「何これ、どういう状況……」

 と、顔を赤くして視線を逸らした。その姿を見た怜四が盛大に吹き出す。

「うははは! ……なんだ、お前らお似合いだなー? おっさんの前でイチャつくなよ……ぷっ、くくく」
「笑うな」

 ツボに入ったらしく、怜四はしばらく笑いっぱなしだった。

 陽芽子も零れてきた涙を啓五の優しい指先に拭い取られて、頭を撫でられて宥められているうちに、だんだんと冷静さを取り戻した。
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