スノーホワイトは年下御曹司と恋に落ちない
しかも定刻になると電話回線を開けるので、基本的に部署長以外は朝礼への出席を免除される。だから通常は、コールセンター課長である春岡以外は朝礼に出る必要はない。
けれど今日ばかりはそうもいかない。
何故なら本日付で、新しい副社長が就任する予定になっているから。
経営陣が変わるのであれば、最低でも役職に就いているものは朝礼に出席するというのが、暗黙の了解となっている。よって今日は、陽芽子も朝礼に出席しなければならない。
確認作業をしているうちに朝礼の時間が近付いてきたらしく、課長の春岡から声を掛けられた。
「おはよう、白木」
「春岡課長。おはようございます」
「ん? 白木、何かいい事あったのか?」
また言われた。
普通に返答したつもりだったのに、上司にまで楽しげに問いかけられて、陽芽子は言葉に詰まった。それでも一応『いいえ』と笑顔を浮かべるが、仕切りの向こうから蕪木と鈴本がまたこちらの様子を見ていることに気が付いた。
もう、ほっといて欲しいのに。
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システムサポート係長の機械オタク男子野坂と、ギフトセンター長の温和なマダム澤本と共に、四人で大ホールへ足を運ぶ。立ち位置が決まっているわけではないので揃って適当な壁際に立っていると、間もなく朝礼が始まった。
代表取締役社長である一ノ宮 怜四氏は、明朗快活な語り口調と要点をおさえた内容の挨拶で、いつも話が短い。社員たちの忙しさも把握しており、延々と無駄話が続けられないのはありがたい限りだ。