スノーホワイトは年下御曹司と恋に落ちない
大人の遊び:D
コールセンターを訪れた啓五が不機嫌な表情をしていたので、次にIMPERIALで会うまで、陽芽子は妙な緊張感を覚えていた。
しかしプライベートで会う啓五は先週の態度となんら変わらず、濃いめのハイボールを口にしながら楽しそうに陽芽子の顔を眺めるだけだ。
どうして啓五は無言で見つめてくるのだろう。言いたいことがあるのなら言えばいいのに、何も語らずただ視線を向けられるのは気恥ずかしい。
「啓。そういえば、ダーツ直ったぞ」
じっと見られている右頬に熱っぽさを感じていると、環が思い出したように話しかけてきた。
「じゃ、久しぶりにやるか。陽芽子、俺と遊ぼ?」
「……うん?」
ハイボールのグラスを手にしてバーチェアから立ち上がった啓五が『ほら』と陽芽子を誘い出す。言っている意味はわからなかったが、啓五のご機嫌につられるように、陽芽子もクランベリークーラーのグラスを手にして席を立った。
陽芽子のいつもの指定席は、奥から二番目のカウンター席だ。背後の通路の向こうにテーブル席がある事は知っていたが、一人で来店するため利用したことはない。
はじめて入る店の奥は想像よりも広く、ゆったりと座れる大きな椅子とテーブルのセットがいくつも置かれていた。その場には二組の利用客がいたが、どちらも陽芽子と啓五を気に留める様子はない。
一番奥のハイテーブルにグラスを置いた啓五が、陽芽子の顔を見てそっと首を傾げた。
「何賭ける?」
「え、賭けるの!? 私、ダーツなんてやったことないよ!?」
「大丈夫だって。線から出ないように、的に向かってダーツ投げるだけだから」