スノーホワイトは年下御曹司と恋に落ちない
スノーホワイトは王子様を探してる
「おいしい~!」
カウンター席に戻って『このお店で一番高いカクテル』を注文すると、陽芽子の目の前にはミモザが用意された。
オレンジジュースに冷えたシャンパンを注いだカクテルは、甘酸っぱいバレンシアオレンジとほのかに香る上品な白ブドウの組み合わせ。喉の奥に感じるさわやかさに、陽芽子の頬は自然とゆるんだ。
「そりゃそうだよ。それ、うちにおいてるシャンパンの中で一番高いんだから」
高いカクテル、と注文すると環は困った顔で唸り声を上げた。単純に高価なウイスキーやワインを使えば高いカクテルにはなるが、それが陽芽子の好みであるとは限らない。
三人で相談をした結果、一度開けると炭酸が抜けてしまう高級シャンパンをボトルごと買い取り、それを使ったカクテルを作ってもらうことで話が落ち着いた。
「わざわざ混ぜなくても、普通に飲めばいいのに」
「俺はこのまま飲む」
陽芽子の勝利報酬は一番高い『カクテル』なのだから、普通に飲むのは約束が違う。しかし啓五はシャンパンとして飲むらしい。彼はいつも強いお酒ばかりを飲んでいるイメージがあるが、陽芽子だけでボトル一本は飲みきれないので、今日は消費を手伝ってくれるようだ。
「値段聞きたい?」
「いや、いい」
環が意地悪な顔をして啓五の前に身を乗り出しても、啓五は至って冷静だった。帰りに金額を請求されたときにさぞ驚くのかと思ったが、この様子だとさほど反応がない可能性の方が高そうだ。
高級シャンパンボトル一本がいくらになるのかなど陽芽子には想像もつかないが、もっと想像がつかないのは啓五の金銭感覚だ。陽芽子より年若いにも関わらず、一ノ宮の御曹司で大企業の副社長である啓五なら、涼しい顔をしてカードで支払って終わるのだろう。そう思うと、勝負には勝ったのになんだか負けた気がする。