スノーホワイトは年下御曹司と恋に落ちない
なぐさめの夜
啓五に誘われてたどり着いたホテルのベッドは、綿雲のようにふかふかで心地よかった。その柔らかなシーツの上へ身体を組み敷かれ、耳元で何度も『可愛い』『綺麗だ』と囁かれた。
褒め言葉の連続があまりにも恥ずかしくて、途中で何度も逃げ出したくなった。しかし啓五の腕から逃れることは出来ず、結局身体中を優しく撫でられて、とろけるほどに甘い言葉を囁かれて、このままどうにかなってしまうのではないかと思うほど丁寧に愛された。
名残惜しそうに身体を離した後は、そのままシャワーにでも向かうのだろうと思っていた。けれど啓五は、起き上がるどころか陽芽子の隣に肘をついてじっと顔を覗き込んで来る。
「……可愛いな」
「え……あ、ありがと……?」
何度目になるのかわからない褒め言葉を重ねられ、また照れてしまう。
恋人ですらない―――いわゆる一夜限りの関係だと言うのに、啓五はベッドの中で陽芽子の身体を抱き寄せて、頬やこめかみに何度も口付けてくる。視線も、なんだか妙に恥ずかしい。
彼は一度だけの相手でも存分に甘やかすタイプなのだろうか。うっすらと筋肉のついた二の腕に陽芽子の頭を乗せて、汗だくになった髪をくるくる指に巻いて楽しそうに遊んでいる。
そんな啓五の顔をちらりと見上げて、ふと気が付く。
「……啓五くんの眼って」
ここに移動するまでの間に一回、行為の最中には何度も見つめ合った瞳は、やっぱり少しだけ珍しい。