お見合い相手が変態御曹司でした

 自分が足に異様に執着し、性的な関心を持っていると気づいたのは中学生の頃だった。

 高校生の時に、綺麗な足に惹かれて初めて女性と付き合った。
 放課後の教室でずっと彼女の足を舐めていた。興奮しすぎてあまり覚えていない。彼女は次第に高慢になり、私の恋人であることを鼻にかけるようになった。人としての魅力を感じなくなると、彼女の足への関心も、薄れてしまった。

 次に付き合った彼女に「足を舐めたい」と言ったら、「気持ち悪い」と振られてしまった。
 その後も数人と付き合ったが、理想の足と人柄は必ずしも一致しない。もう諦めようと思っていた。私はきっとおかしいのだ。まっとうに結婚など出来ないだろう。

 

 そんな私の目の前に、突然現れた理想的な足を持つ女性は、少し覚束ない足取りで山手線ホームへと上がっていく。

 電車に乗るまでは眺めていようかと後ろをついていって階段を上がろうとした時に、糸が切れたかのようにその女性が私に向かって倒れこんできた。私は階段の端にいたから、カートから手を離して左手で手摺を掴み、右手を差し伸べた。

 全てがゆっくりに見えた。
 私の右腕は彼女の身体を支える。
 重力に耐えられず、左手が手摺から離れた。

 何故か、自分はどうなってもいいから彼女だけは守りたいと思った。

 周囲から小さく悲鳴が聞こえていた。
 勢いは削いだが、数段下まで落ちてしまった。端にいたことと、私が支えたことで、後ろにいた人も避ける猶予があったのか、幸い他人を巻き込むことはなかった。自分は無傷だったが、彼女は足を捻ったのだろう。救急隊員がくるまでの十分程で、足首が腫れあがっていた。

 真っ白な顔で浅く息をしてる彼女の身体は熱く、明らかに高熱がある。持病があるのかと持ち物を調べたがそれらしき手帳等は無かった。社員証にある新宿の広告代理店の社名と「榎本楓子」という名前を記憶する。

 靴を脱がせて、彼女の足がとても小さいと気づいた。

 なんて……本当になんて理想的なんだろう!

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