お見合い相手が変態御曹司でした

 慌てて体を離して、髪を整えてドアを開けた。

「楓子ちゃん、ママ達買い物行ってくるけど、一緒に行く?」
「え、なんで? さっき帰ってきたばっかりじゃない?」
「いいお肉買いに行こうかってパパが言うから」

 母が私にそう答えると、柊平さんが遮るように言った。

「お気遣いなく」
「いーえー! せっかくだから!」

 母が無邪気にニコニコしている。こうなると、たいてい母は我を通す。

「……では、私はもう少し写真を見たいので、ここにいても構いませんか?」
「勿論!」

 母は柊平さんに笑顔で返事をしてから、私に向かって言った。

「じゃあパパとママは出掛けるわね。車で出るから、すぐ戻るわ」

 そう言い残して母はまたパタパタと軽い足取りで階段を降りていった。

 家に二人きりになってしまった。
 母はおそらく柊平さんを紳士だと思っているのだろうが、この人は変態なのだ。ド変態なのだ。

 これからどうなるのか、馬鹿な私でも容易に想像がつく。私は、自分の手元から聞こえた鍵のかかる軽い金属音に、体が震えるのを感じていた。

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