お見合い相手が変態御曹司でした

「お、お茶のおかわり持ってきますね」

 私はそう言って、柊平さんを見ずに部屋を出た。
 足に力が入らない。でも妙に頭はクリア。スカートが皺になってないかな。気づかれそうで恥ずかしくて、両親の顔をまともに見られなかった。


「おかえり。お買い物ありがとう。お茶もっていくね」
「そうして。鳥取大山(だいせん)のいい鶏肉があったわよ~。これからパパと夕飯作るから、楓子ちゃんはお部屋でゆっくりしててね」
「うん、ありがとう」


 両親は仲が良くて、よく休日に一緒にキッチンに立っている。しばらくは上に来ないだろうと思った私は、自室に戻った。

 ローテーブルにお茶を置いて、その横に座っていた柊平さんに抱きついた。

「どうしたの? 楓子ちゃん?」

 柊平さんが驚いた顔をして私を見ている。自分から男の人の胸に飛び込むなんて初めてだった。体温にドキドキする。心臓が早くて胸が苦しい。身体の芯が熱くてもどかしくて堪らない。

「……してください」

 私は自分から下着を脱いで、床に座っている柊平さんの前に立ち、足を広げてスカートを持ち上げた。

「してください」

 酷い事を言ってるのもわかる。こんな事を言い出すなんて、呆れられたかもしれない。でも欲しくて我慢出来ない。

「だめだよ。ご両親が戻って来られたし、それに避妊具(ゴム)がない」
「あ、あります……友達に、もらったのが……。それに両親は二人で料理するから、多分上にはしばらく来ません」

 私はそう言い訳をしながら、机の引き出しを開けて蝶柄の黒い箱を出した。よくうちに遊びに来る友人がふざけて買ってきた物。

「どんな友達?」
「高校の同級生です……」

 私が震えながらそう話すと、柊平さんが私の手から箱を奪って蓋をあけた。ひとつ減ってるのに気づいたんだろう。柊平さんが秀麗な眉をひそめた。

「私、見たことなかったから……一個自分であけたんです……」

 恥ずかしいから言いたくなかったけど、他の誰かと使ったと思われるのも嫌だから、正直に答えた。

「楓子ちゃん、そんな事をするんだね」
「ごめんなさい」
「違う、可愛いんだ。おねだりする天使だなんて、いやらしくて可愛い」
「私は天使じゃないです……。したいです。お願い……」

 柊平さんが避妊具を一つ取り出した。綺麗な顔で淫靡に笑っている。もう後戻り出来ない。



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