お見合い相手が変態御曹司でした

 その日は楽しく食卓を囲んだ。きゃぴきゃぴとはしゃぐ母に嫌な顔もせず、お酒の好きな父に付き合って、日本酒だけでなく焼酎やワインまで飲んで、感想を話していた。
 柊平さんは、足フェチの変態であることを除けば、本当に穏やかで優しい人だなあと思う。私には勿体ないくらい。
 もし飽きられたらどうしよう……? もっと魅力的な人(足)が現れたら、私は振られちゃう?
 好きになればなるほど不安も増えて、嫌な想像をしてしまう。早く結納の日がくるといいのに……。

 柊平さんが帰り支度をして、迎えの車が来るのを待っている間、私は柊平さんに質問した。

「どうしてブーゲンビリアをくれたんですか?」
「花言葉……」

 柊平さんは、呟くようにそれだけ言って、綺麗な顔で微笑んでる。穏やかに。
 さっき、あんなに激しく私を抱いた事なんて忘れてるみたいに。

 男の人ってヤッたら、その女に興味を持たなくなる、なんて友達から聞いたことあるなぁと、ぼんやり考えていた。
 私から誘うなんて、はしたなかったよね……恋愛の駆け引きとしてはダメだったと思う。でも、柊平さんに触れて欲しくて仕方なかった。好きで好きで、一緒にいたくて我慢できない。


 玄関の外まで出て柊平さんを見送りながら、帰って欲しくないなぁと思っていた。引き留めたくて、つい柊平さんのジャケットの裾を引っ張ってしまった。驚いた表情で彼が振り返ったけれど、言葉が見つからない。子供っぽくて呆れられたんじゃないかな。そのまま無言で見上げていると、柊平さんは困ったように笑って、前髪に軽くキスをしてくれた。

「来週は、ゆっくり、会おうね」

 別れ際に、柊平さんがそう言ってくれたので、私は少しほっとした。



 眠る前に赤いブーゲンビリアの花言葉を調べてみた。

 花言葉は「あなたしか見えない」だった。







お読みくださり、ありがとうございました。
変態ですが相思相愛の、破れ鍋に綴じ蓋カップルです。
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(初出:アルファポリス)
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