お見合い相手が変態御曹司でした
「私が勝手にあなたを好きになりました。だから、今度はあなたが、私を好きになってくれたらいいなと思っています」
穏やかに微笑む姿は仏像というより聖母だ。
容姿端麗で家柄も良く、物腰も柔らかで非の打ち所がない。こんな人、周りが放っておかないだろうに。何故これまで結婚せずにいたのか。何故私なのか。
そんなことを考えて、なんと答えていいかわからず戸惑っていると、オーダーしたものが運ばれてきたので、可愛いサンドイッチから頂くことにした。
美味しい~!
こんな場所、滅多にこないから、雰囲気だけでお腹いっぱいだと思っていたのに、美味しくてついつい手が伸びてしまう。
アフタヌーンティは下の段から食べるんだよね。先日、母に教わっておいて良かった。
「スコーンも美味しいですよ」
二個目のスコーンを手で割りながら私がそう言うと、木島さんが笑った。
「楓子さんは可愛いですね」
恥ずかしくて固まってしまった。でも、ストレートに好意を示されて、素直にうれしいと思った。だってモテたことないもん。
私が現在関わっている仕事や、木島さんが上海に住んでいた頃の話をしていたら、約束の二時間はあっという間だった。
次の週末も会いましょうと話をして、私たちは対面を終えた。
別れ際の木島さんは何故か俯いて、私の足元を見ていた。
「また、あなたにお会いできるのがとても嬉しいです」
そう言いながら微笑んでいて、十二歳も年上なのに、私は木島さんを可愛いなと思った。