お見合い相手が変態御曹司でした
「意識を失ったあなたは、すぐ後ろにいた私に向かって倒れてきたんだ。支えきれずに怪我をさせて申し訳なかった」
「ええ?! 私、柊平さんにぶつかってたんですか?! すみません! 駅員さんや鉄道警察の方からは、誰にも怪我はさせてないって聞いてたんですけど」
近くにいたどころか、私は柊平さんを巻き込んでいたらしい。人間ひとりが階段上から降って来るなんて凶器でしかない。小柄で軽い方とはいえ、四十五キロの物体なんだから。
私が平謝りしていると、柊平さんが優しく笑う。
「言わないようにとお願いしたんだよ。幸いかすり傷だったし。でもあなたは足首を捻挫してしまった……」
「そうそう、そうなんですよね。発熱自体は単なる風邪だったんですけど、左足が使えなくてしばらく困りました~」
普段は父に頼るのは嫌なのだが、捻挫が治るまでの二週間は、会社まで父の車で送ってもらっていた。
そうか、柊平さんが支えてくれたから私は捻挫程度で済んだんだ。階段から落ちるなんて、頭でも打っていたら下手したら死んでるもの。