ガチ恋
 ブリーチの箱に書いてある説明をチラッとみて脱色液を混ぜていく。思いっきり上下に振って頃合いかなというくらいで髪になじませる。
「しみるな、これ」
呟いて、先程、目についた書置きを見にリビングに戻る。どうせ親父からの伝言であることは分かっている。あのことがあった以降、俺は父親に対して少し遠慮がちになり、申し訳ないという気持ちから避けるようになっていた。男で一つで育ててくれているということもプレッシャーに感じていたのも事実で、父には自分の人生を謳歌してもらいたいものだ。こんな不出来の息子なんかほっといてな。そんな風にいつも思っていた。
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