ガチ恋
 そんな事を呟いている自分が恋に対して幻想を抱いている事は重々承知で、愛の重さが相手とは違うということはわかってもいる。しかし、その比重を100で表すことがナンセンスだということもわかっている。思いの強さなんてその日に変わるものだしお互いに100の気持ちの場合だってあるはずだ。これに関して言えば自分の願望かもしれないが俺はそれを信じていたかった。
 詩織と付き合い始めた当初、お互いにそうだったと思いたいからだった。しかし、今となっては詩織に対する気持ちは微妙なものとなっている。好きという気持ちがないわけではないが、どちらかと言えば憎いという感情のほうが強いと思うことがある。が、今回流れてきた噂を耳にしたとき、俺の心が動揺を隠し切れなかった。
「ねえ、夏希って佐藤さんとは別れたんだよね」
真白が怪訝な顔をしながら訊いてきたのだった。
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