ガチ恋
とうかの言葉は詩織を辛辣に否定して、どんなに酷い事をされたのかを俺にわからせようとしているのは明白だった。それは真白に対して言う挑発的な言葉とはまるで別物だった。それからとても悔しそうに両手は拳を握っていた。多分だけどとうかの怒りは詩織に向いているのではなくて、ここまで言っても、心に響いていない俺に向けれているのだろう。

 酷い事をされた。
 憎い。
 裏切られた。
 信用できない。
 
 そう言った負の感情はもちろん持っているけれど、好きだった詩織の悪口を聞くと、心の中でモヤモヤが募ってしまう。だから俺はとうかに同調して一緒になって詩織を悪く言うことができないでいた。

「なんでわかってくれないだよ」
消え入りそうなとうかの叫び声は悔しさをにじまさせていた。
< 110 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop