ガチ恋
場の雰囲気は澱みきっていた。とうかは言葉で伝わないと悟り、俺の胸を弱々しく叩くだけで、何も言わない。ドンドンと体に振動だけが響いている。そんなカオスの中で真白はいつものようにスマホを覗き込んでいたが、突然画面から目を離して、立ち上がった。
「とうか、無駄だよ。いくら言っても夏希には届かないよ」
「なんで?」
「だって夏希は佐藤さんと向き合う気がないんだから。向き合うと寄りを戻してしまいそうなんだよね?」
「そんなことはない」
「あるんだよ」真白が叫ぶように言った。その声は遥か遠くまで響いて、俺の心を打ち抜くには十分すぎるほど大きくて、思わず
ビクンと体が反応してしまった。普段目を合わそうとしない真白の目が俺を一直線に見つめている。鬼気迫るような瞳で睨みつけてくる真白。その目に圧倒されて体がのけぞる俺のネクタイを掴んでグイっと手繰り寄せられて、真白は静かにそっとリップクリームでつやのいい唇を近づけてきた。
唇が重なるまで数センチというところで、「なにしてんだよ」と、とうかが真白の長い髪を引っ張ってそれを阻止した。阻止された真白は恨めしそうにとうかの顔を見る。
「もうちょっとだったのに」
「なに考えているんだ、おまえは」
「知らないの?恋の傷は新しい恋でなおすんだよ」平然と、とうかに真白は言った。
「とうか、無駄だよ。いくら言っても夏希には届かないよ」
「なんで?」
「だって夏希は佐藤さんと向き合う気がないんだから。向き合うと寄りを戻してしまいそうなんだよね?」
「そんなことはない」
「あるんだよ」真白が叫ぶように言った。その声は遥か遠くまで響いて、俺の心を打ち抜くには十分すぎるほど大きくて、思わず
ビクンと体が反応してしまった。普段目を合わそうとしない真白の目が俺を一直線に見つめている。鬼気迫るような瞳で睨みつけてくる真白。その目に圧倒されて体がのけぞる俺のネクタイを掴んでグイっと手繰り寄せられて、真白は静かにそっとリップクリームでつやのいい唇を近づけてきた。
唇が重なるまで数センチというところで、「なにしてんだよ」と、とうかが真白の長い髪を引っ張ってそれを阻止した。阻止された真白は恨めしそうにとうかの顔を見る。
「もうちょっとだったのに」
「なに考えているんだ、おまえは」
「知らないの?恋の傷は新しい恋でなおすんだよ」平然と、とうかに真白は言った。