ガチ恋
「どこ見てんだよ、テスト返せ」と照れて頬を赤らめながら俺の手から素早くテストをもぎ取っていた。それか無視をしてスマホゲームに没頭する真白にどうだったんだよと訊くとうか。真白は片手でスマホゲームをしながら弁当を食べている手を止めて「満点だったよ」と言い放った。一瞬でその場の空気が夏の風から冬の風に変わったような気がした。
「は?」
とても信じられないとうかは噓はつくなと、言わんばかりに訊き返す。
「だから三科目満点だったよ」
「は?見せてみろよ」
「教室においてきた」
「取ってこいよ」
「やだよ」
 不毛な掛け合いを始める二人。言ってもきかないとうかは業を煮やして立ち上がり、
「だったら今から取りにいこうぜ」
と、真白の手と俺の手を掴むも、「教室に佐藤さんいるよ」と真白の一言でその手を離した。
 とうかは頬をポリポリ掻いて席に静かに座った。
 気を使われていると思うと心苦しさを感じてしまう。けれど、それよりもこういうところに真白の底意地の悪さが出ているような気もするんだよな。小賢しいというか。
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