ガチ恋
　俺は詩織を連れて近所にある喫茶店に連れて行くことにした。その喫茶店は古くからありそうで、初老の白髪頭の男性が一人で経営しているようだった。マスターに珈琲を頼んで、二人の前にオシャレなカップが到着するまでの間、二人は一言も喋ることはなかった。初めての場所ということもあるだろうが、他に客がいないことも原因だと思う。

　マスターが視界から消えるのを見て、俺は詩織に話しかけた。
「どうして家がわかったの？」
そう訊くと詩織は珈琲に口をつけて心を落ち着かせる。唇の渇きが気になったのだろう。
「近くに友達がいるから」
そう訊いて、確かに住宅街であり通っている高校も近いのだからそうなんだろうと納得できた。実際に近所とまで言えないが住宅街を下りたところにあるコンビニ近くにとうかの家もある。付け足すならあの野郎、りゅうやの家も。
「で、何しにきたの？」気丈に振る舞うことに意識が集中しすぎてしまいついつい冷たい態度をとってしまっている。それに対して詩織は視線を珈琲の湯気に向ける。
「噂きいてるよね？」
「……どの噂？」
だいたいの想像はつくが敢えてとぼけた。
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