ガチ恋
 無防備なところに思いっきり顔面を殴られた気分だ。
 優位にたった詩織は少し前のめりになり机に両肘をつけている。緊張がほぐれてきたのか。そう思うと俺は余計に緊張していく。
「私は夏希が浮気したことを責めるつもりはないよ、だって夏希は誤解していたんでしょう」
誤解だと、誤解で済まそうとしているのか。
「……それでも、俺は、許せない、お前も正樹も」
器量が狭いといわれようとも、許せない。許すこができない。なぜなら……許されるわけがないのだから。ボコボコにしてしまったのだから。詩織が平行線をたどることにストレスを感じたのか溜息を一つはいた。
「いいわ、わかったよ。一回私たちは別れましょう。これ以上の会話は嫌われてしまうものね。でも、これだけは約束して、私からもう逃げないで。約束できるなら友達に戻りましょう」
完全に主導権を握られてしまい、何も言い返せなくなってきている。詩織の提案をこの場はのむべきなのか。そう思うと過度なストレスを感じ、次第に胸が苦しくなって息が出来なくて、体が震え出していた。
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