それでも、先生が好きでした。
みんなからの言葉に
あたしは首を左右に大きく振って
精一杯の否定を示す。
か、かわいいとか…
有り得ない!!
だけどそんな行動も虚しく
さらに数を増したあたしの姿への聞き慣れない言葉たちに
あたしはもはや
教室の隅に身を潜めるしかなかった。
教室の前方の扉の下
小さく疼くまった瞬間。
「女子〜!
準備出来たか〜??」
背中越しに響いたその声に
思わず尻餅をついてしまった。
がばっと後ろを振り向けば
廊下と教室とを隔てる薄い扉の曇りガラスの向こうに写る
先生のシルエット。
そのシルエットを
相変わらず尻餅を着いたまま見上げていると
「出来たよ〜!」
という誰かの叫びに
「え?」
っと言葉を零してしまうかしまわないかの一瞬
ガラリと開いた扉の向こうにいた先生と
必然的に視線が絡まった。
「…………」
「…………」
「…っえ!?
なっちゃん!!??」
たっぷりの沈黙のあと
そう大声を出した先生は
あたしが写るその目を大きく見開いていて
驚いていることは
一目瞭然。
ただ、その驚きの理由が想像出来たあたしは
沸き上がる不安に耐えるように
視線を逸らした。