それでも、先生が好きでした。
…そんな風に驚くほど
似合ってないんだろうな…
想像以上に傷付いた心が
これ以上傷付かないように
先生と視線を合わせないよう
俯いたまま立ち上がる。
男子が教室に入ってきて
騒がしくなった教室。
その騒ぎについていけてないのは
あたしと先生だけだろう。
テンションの高いみんなの雰囲気に
自分の姿を隠してしまおうと
その場から離れるために歩きだそうとしたが
「なっちゃん」
あまりに優しく呼ばれた名前に
思わず振り返ってしまった。
視線の先にいた先生は
びっくりするくらい優しい顔で笑ってて
「可愛い」
あたしだけに聞こえるように
小さく呟く。
そんな言葉に
しばらく動けなくなったあたし。
信じられなくて
意味が理解できなくて。
数秒の沈黙のあと
ようやく何を言われたのか理解した途端
一瞬で体が熱くなった。
「なっ…、
何言ってんですか!?」
しどろもどろになりながら
口をついた言葉はそれ。
先生はクスクスと笑うと
ゆっくりあたしに近付いてくる。
そして、あたしの横に辿り着くと
「まぁ、すっぴんが1番可愛いけど」
そんなこと言いながら
あたしの頭を軽く叩いて通り過ぎていった。