それでも、先生が好きでした。





…っ、反則…!!



通りすぎていった先生を振り返ったまま

あたしは動けなくなった。



好きな人に

可愛い、だなんて言われて

優しく、頭を叩かれて



ときめかない女の子が、いるわけないよ…





視線だけで先生を追うと

そんなあたしとは裏腹に


「んじゃ席着けよ〜」


なんて、まるで今あったことが嘘みたいに

いつものようにみんなに声をかけていた。



…当たり前、なんだけれど。


あたしが好きなだけだから

そうに決まってるんだけど



あたしにとって先生は

こんなにも大きな存在なのに


先生にとってのあたしは

何でもないのかなって思うと…



ちょっと、悲しい。





みんなが席についたのを確認してから

先生が口を開く。



「今日はついに体育祭だな


今日は勉強のことを忘れていいから

思いっきりやろうな!」



先生の言葉に

みんながコクコクと頷いた。


そんな姿を

先生は満足そうに見る。





「先生!」



突然響いたのは

聞き慣れた明るい声。



声の主を捜せば

沙来がピシっと挙手をしていた。





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