それでも、先生が好きでした。
「…持ってきてくれたんですか?」
驚いて先生を見上げると
「普通持ってくるだろ」
と先生は笑う。
…これが普通なのか…。
他人と深く付き合うことをしないあたしは
他人の優しさに触れることが
極度に少なかった。
だから゙普通゙と言われても
基準が゙普通゙でないあたしには
すごく特別な事に感じてしまう。
「なんか…いろいろすみません」
ベットから下りて
上靴を履きながら無意識に呟いてしまった。
「…なんでそうなんの?」
何気ない呟きに返ってきたのは
少し怒った先生の声。
先生の目を見れば
呆れたような、怒ったような目をしてる。
「…え…なんでって…」
そんな目に戸惑い俯くと
「なんで、もっと甘えないんだよ…」
大きなため息と共に
先生はあたしの肩をガシッと掴んだ。
その衝撃に顔を上げれば
「何のために俺がいる?
数学教えるためだけか??
…違うだろ。
俺は生徒一人一人が大人になるために
支えてやるためにいるんだよ。
てか支えたいんだよ!
どうして、もっと甘えないんだよ。
一人で無理すんな…」
先生はあたしの目を真っ直ぐ見ながら
そう声を荒げた。