それでも、先生が好きでした。
「だって、拓哉モテるじゃん」
「は?」
拓哉を見下ろしながら
少し睨んでそう言うと
拓哉はマヌケな声を出す。
「あんただって、あたしなんかと噂になったら嫌でしょ?
…拓哉に迷惑かけれないよ」
そんな拓哉に
肩を落としながらそう言った。
「…お前、馬鹿?」
拓哉はそう言いながら体を起こすと
逆に睨み返して来た。
そして小さくため息つくと
「そんなこと気にしてる場合かよ」
そう冷たく言い放ち
「昨日高田が
どんな感じで俺に頼んだと思ってんの?」
静かに問うてきた。
拓哉の強い視線に
思わず体がビクッとはねる。
そんなあたしを
相変わらず睨んだまま
「俺なんかに何回も頭下げて
『那智を頼む』って言ってきたんだぞ?
俺だって、ただ頼まれただけじゃ
引き受けなかった。
でも高田の態度見て…
真面目に考えなきゃって思ったんだよ。
その上で引き受けようと思ったんだよ。
くだらねぇこと言うな。」
低く、力強い声でそう言った。