それでも、先生が好きでした。
「迎え来たぞ―」
重たい空気を壊すかのような明るい声と共に
部屋の扉が開けられた。
声のした方を見れば
最近は中まで迎えに来てくれるようになった拓哉が
そこに立っていて
「…はっ!?
え、どうした!?」
あたしと目が合ったとたん
焦りをあらわにしながら
あたしの側に寄ってきた。
「…どうした?」
あたしの顔を覗き混むようにしゃがんだ拓哉は
幼い子をあやすかのように
やさしく声をかけてくれる。
そんな優しさに
あたしは慣れていないから
関を切ったかのように
泣きだしてしまった。
「先生…
何したんだよ?」
あたしにかけてくれた声とは程遠い
低く、かすれたような声が聞こえる。
疼くまったあたしには、何も見えないのだけど
拓哉が怒っていることだけは
明らかで。
「今日は、もう帰れ」
そんな拓哉に刃向かうような
先生の冷たい声に
あたしの世界は色を無くした。