それでも、先生が好きでした。
俯くと、目の前にいる拓哉の足だけが目に入る。
上から感じる強い視線。
この状況をどうすればいいのかわからなくて
あたしはフラフラと視線を泳がせる。
「どうしたよ?」
そんな言葉とともに
拓哉はその場にしゃがみ込んだ。
下から顔を覗き込まれ
必然と合ってしまった視線。
「話してみ?」
きっと、あたしはものすごく不安げな顔をしているんだろう。
拓哉の声は本当に優しくて
あたしを、安心させようとしてくれてるのが
痛いほど伝わってきた。
あぁ、もう、本当に
どうしてこんなに優しいの…
拓哉の優しさに
じわりと滲んだ視界。
それと同時に
こんないい人の幸せを
あたしはこれ以上奪ってはいけない―…
そう、強く思った。