それでも、先生が好きでした。
「………じゃねえよ」
「え?」
小さな拓哉の声が聞き取れず
聞き返したその時
「きゃっ」
肩を力強く掴まれ
ベンチの背もたれに押し付けられた。
突然のことに
あたしの頭は真っ白で
でも、拓哉が怒っていることだけは
嫌になるほど伝わって来て
それが悲しくて…
「ふざけてんじゃねぇよ!
何考えてんだよ!?」
あたしの目からは大粒の涙が零れ落ちる。
「…た…くや、痛い…っ」
鋭い肩の痛みは
きっと拓哉の指が食い込んでいるのだろう。
顔を歪めたあたしに
拓哉は冷静さをとりもどしたのか
「…っ、ごめんっ」
あわててその手を離した。
そして訪れた重い沈黙。
拓哉は両手で自らの顔を覆い
力無くその場にしゃがみ込む。
それから
意を決したように顔をあげて、あたしと視線を絡めると
静かな、でもハッキリとした声で
その沈黙を破った。
「…えりかが好きだ」