となりの紀田くん



「本当に紀田はズルいよ………」





ズルいのはどっちだ
バカ猿………





「だから言えなくなる前に言う………」





急に真剣な顔をして
俺を強く見据える……




言うって何を?




「私は紀田が好き。今もこれからもそれは変わらないと思う………紀田の過去も紀田が話してくれるまで聞かない……」





「優亜………」





優亜はそんなに
俺を大切に思ってくれてるのか





それがかなり嬉しくて
もう一度、優亜を抱き締めようと
したが、次に優亜が発した
言葉によってその手は止まる





「だから………別れよう」





は?





「何言ってんの?」





「私、紀田といたら……どうしても聞いちゃうと思うの。だから、それを阻止するため………紀田を困らせたくないから……」





「なんだそれ………全部俺のため?そのために、お前は傷つくの?バカだろお前」





「もともと……よくわからない感じで始まった関係だし……バカでもいい。私は本気だから………





本気は紀田の過去が知りたい。けど、それを話すことによって紀田が傷つくなら私は聞かない………でも、それじゃあ私が苦しい」





優亜の真剣な瞳と
強い口調に気圧され
何も言えなくなった……




俺は過去のこと………
要との出来事を
思いだしたくないんだ。





昴さんだって
死ぬほど大嫌い




でもお前とも
離れたくない………




矛盾してるよな………





「だから、もう終わりにしよう。もう、誰も傷つかないように……」






「じゃあ、せめて最後に教えてくれ」





「なに?」





「何で悠斗とキスしてたの?」





「ーーーーーーーーっ!!見てたの!?」





優亜が目を見開く




「たまたま…な。」




「そ、そっか。特に意味はないよ」




悲しげに俯いて呟く





特に意味はないのに
キスをしたのか………




あれ、これ………




俺が、かつて優亜に
対して言った言葉……
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