となりの紀田くん
ってゆーか
紀田に人間として
女扱いされたの
初めてかも………
いつもオス猿とか
メス猿とかばっかりだから
急に言われると
凄くキュンとくる。
「まあ、さっきのお世辞じゃないけどな……」
紀田に引き寄せられたまま
ボーッと考え事をしていると
ふいに耳元で囁かれる
「うわぁっ!!もう、耳元で喋んないでよ、びっくりするじゃん!」
驚いて紀田から離れようと
するけれど
今度は思いきり抱き締められた。
不思議だな………
あんなにあいていた距離が
たかが席替えごときで
こんなにも縮まってしまうなんて
たかが席替え
されど席替え
しかもまた隣同士になれて
私は運の良い女かもしれない
このまま時間が
止まってしまえばいい
しかし、願ったところで
それが叶うわけもなく
「紀田、離して……」
要さんの真相を
暴くまで貴方とは
付き合わない
「わかってる……もうちょっとだけ。充電させて?」
いつも憎たらしいくせに
急に甘えるなんてズルいよ
「うん………ちょっとだけね」
私は暫くの間
紀田の柔らかな
温もりに包まれていた。
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「もう大丈夫」
そう言って私から離れる紀田
その瞬間温もりが消え
秋の冷たい風が
私を包み込むーーー
なんて切なくて
悲しいんだろう。
「ねぇ………紀田。これからも私と話してくれる?」
「当たり前だ……心配するな、内倉」
「ありがと!」
紀田の優しさに
精一杯の笑みを溢して
二人で裏庭を後にしたーーー