となりの紀田くん



※優亜視点




暫く放心状態のまま
羽麻くんに腕を
掴まれて走っていた




気づいた頃には
校舎内にいて………




「ちょ!羽麻くん!」




「…………………」





「羽麻くんってば!」





私の呼びかけに
やっと反応して
止まる羽麻くん





しかし腕は掴んだまま
私の方へ振り返る





「急にどうしたの?何で、羽麻くんが怒ってるの?」





「だって、内倉何も嘘ついてないのに………謝れだなんて酷くねえか?」





確かに羽麻くんの
言う通り………




「紀田も紀田だよ………要の言うことなんて信じやがって」





「しょうがないよ………私は大丈夫だから」





しょうがないって何が?
大丈夫って何が?
自分で言ったくせに
そんなことを思う。




「…………なく………だろ……」




羽麻くんが何かを
呟いたが聞き取れない





「ごめん、聞こえない……」





「しょうがなくねぇだろっ!!!」





いきなりのどなり声に
驚いて肩がビクッと跳ねる




それと同時に
回りの生徒たちや
一般客が私と羽麻くんに
視線を向ける




「は、羽麻くん!声大きいよ!」




私は出来る限り小さな声で
羽麻くんを注意する





「あんな泣きそうな顔しといて何が大丈夫なんだよ!?そんなに傷ついてまで、あいつの事を好きでいるわけ!?」




「わ、わかったから!ちょっと場所変えよ?」





一体1日に何度場所を
移動すれば気がすむんだろうか。






私は羽麻くんを連れて
屋上へと向かったーーーーー




てか、仕事サボりすぎだな私たち。
さすがの鈴も、怒ってるかもね…





ーーーーーーーーー





「と、とりあえず………いったん落ち着きなよ!」





屋上に着いてすぐ
羽麻くんにそう告げる




頷いて軽く深呼吸をし
再び私を見る




「なあ………好きなのに傍にいれないって辛くねえの?」





辛くないって言ったら
嘘になるけど………




「辛く………ないよ」




「嘘つくなよ。俺なら無理だね……好きな人の傍にいれないなんて」





そんなの私だって同じだよ!!
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