となりの紀田くん



「それに俺なら………大好きな人を泣かせたりしない」





「私、泣いてないよ………」




「でも、これから泣くだろ?」




「え…………」





ポロッ




あれ?





私………泣いてる?





「いっつも見てて思ってた。内倉は一人で抱え込んで、泣くのを我慢し過ぎなんだよ」





「私……私ね。紀田はずっと私の味方でいてくれてると思ってた………要さんの企みの真相を暴くために紀田と別れたのに………紀田への好きは積もってくばっかりで………」






私の言葉を黙って聞く
羽麻くんもまた
優しい心の持ち主
なのかもしれない





「付き合ってる時だって紀田は私に、一度も好きって言ってくれた事なくて、今だって要さんを信じて………私には紀田の気持ちがわからない………だから………もうやめてもいいよね?」





紀田を好きでいること。






「よく頑張ったな………もう我慢しなくていいぞ?」






そうやって笑顔で
私の頭を撫でてくれる
羽麻くん…………





簡単にはやめられなくても
少しずつ確実に
私の中から紀田を





ーーーーーー消すんだ






私は気がすむまで
泣き続けたーーーーーー





ーーーーーーーーー




「ありがとう……もう大丈夫!」




私は涙を拭って
ニッと笑う




「ごめん……俺が大丈夫じゃない」





「え?」





と言った時には
もう遅い





ぎゅううううううっ





私は羽麻くんに
抱き締められた………





ってえぇえええええ!?





「内倉………男は女の涙に弱いんだよ」





「ふぇ?あ………ご、ごめんね?」





「いや、謝んなくていい。決めた」




決めたって何を?




「やっぱり内倉………お前、俺と付き合え………」




「いや、ちょっ!何でそうなる!?」




私は羽麻くんの
腕の中でじたばたと
暴れてみる………が




まったく離れない…




何でぇえぇえええええ!?

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