となりの紀田くん
ああ、いけない!!
紀田を忘れると決意したのに
頭の中はいつも紀田で
いっぱいだ………
私が思いきり首を横に振って
邪念を取り払っていると
「おい」
背筋が凍りつきそうに
なるほどの冷たい声が
聞こえてくる………
振り返らなくてもわかる
紀田だ………
も、もしかして
私また心の声を
口に出してた!?
「な、何?」
恐る恐る尋ねる
「誰が誰を抱擁するって?」
なんだ、そんなことか!!
焦らせんなバカ
「あんたが客を……に決まってんでしょ」
一気に力が抜けて
脱力感いっぱいに
答える
「は?ふざけんな……俺はやんねーからな」
「サボった罰に決まってんでしょ!成果を出さないと休憩無しだよ?」
「しょうがねえな……そのかわり…」
「そのかわり…?」
「休憩取れたら俺とデートな」
「は?え!?ちょっ!!まって!!それは無理!」
慌てる私をよそに
ニヤリと笑って
喫茶に戻ってく紀田
「人の話し聞けよ!!」
なんていう私の
ツッコミは人混みの中へと
小さく消えていったーーーーー