となりの紀田くん



喫茶まで戻ると
私たちの前から
姿を消した紀田がいて




仕事の続きを
全うしていた。




やめろ……私。




気持ちを消すって決めたなら
紀田を見ちゃだめだ………






私は紀田から視線をずらして
受付嬢の仕事を再開したーーー





ーーーーーーーーーー





「はーい、お疲れ様!」




文化祭が終了して
ホスト喫茶は閉店した。





最後まで私が勝手につくった
無茶難題をやり遂げた紀田





「内倉、お疲れ!」




羽麻くんが私の頭を撫でる




「あ、ありがと」




「さっさと片付けて一緒に帰るか!」





「そうだね」





紀田はまるで私と羽麻くんの
会話が聞こえてないとでも
いうように無視して
片付けを始める





いつもなら
めんどくさがるくせに…





「内倉?」




「え、あ……ごめん!片付けよっか!」




「おう………」




羽麻くんは不満げな
顔をしていたけれど
私はそれに気づいて
いなかったーーーーー




ーーーーーーーーーー




羽麻くんと帰宅中にて。




「明日結果発表だよなー!楽しみ」





本当に紀田はバカだ。
あんなこと言ったのにも
関わらず………





私の為に仕事を頑張って
くれるなんて………





「うちの出し物、部門一位取れてるといいな」





紀田は誰にでも
優し過ぎるんだよ……




だから苦しくなるんだ。




「おい」




急に羽麻くんの
低く冷たい声が
聞こえてビクッと
肩を震わす




「ど、どうしたの?」




羽麻くんは
不機嫌丸出しの顔で
私を路地裏へと連れ込んだ………
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