となりの紀田くん



もちろん私と
紀田もそれに
続くわけで……




彼女たちは
旅館の中にある
喫煙専用のテラスにて
会話を始めた。





私と紀田は
テラスの外側に回って
草の茂みに隠れながら
様子を伺う





「どう?上手くいってるの?」




楽しそうに要さんが笑う





その笑顔に恐怖で
体が震える………





そこまでして
紀田を闇に突き落としたい
過去って何?





「ああ、上手くいってるよ。紀田を犯人に仕立てあげる算段も、もうつけてある」





「ふーん……女将さん。貴女は女将の妹として、この旅館を担って。それ相応のお金は払うわ………」






「かしこまりました。要様」






「なあ、上手くいったら……俺と付き合ってくれるんだよな?」






「当たり前じゃない…嘘はつかないわ」





そういって悠斗の上に股がり
頭を撫でるーーーーーー





「要……愛してる」





何これ……





金に溺れた貪欲な女
女に執着した哀れな男
過去の復讐に汚れた女





まるで地獄絵図………





要さんの言葉
全部嘘だよ………




悠斗はバカだ




彼女なんかの為に
手を汚して




バカだ…………





悠斗聞いて?
要さんはね………
貴方と付き合うつもりなんて
これっぽっちもないんだよ?





そのキスは全て
貴方を手懐けて
利用する為だけの
行為に過ぎない………





ふと横に目をやると






「え?」





平山さんが立っていた。





嘘でしょ!?





平山さんは私の
視線に気づき
走って行ってしまった。





たぶん私以外は
彼女の存在に
気づいていなかったと思う





一体………いつから
そこにいたのだろう?





平山さん………
きっと泣いてるよね?





私は胸が苦しくなった。




叶わない恋の苦しみ……
その気持ちが私には
痛いほどわかる。





なんだ…………
結局、私も紀田のこと
忘れきれてないんじゃん。





「ところで、そこのおネズミちゃん二匹、隠れてないで出てきなさいよ……」





要さんの言葉に
ドキンと鼓動が跳ねる




ば、バレてた!?
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