となりの紀田くん



私が隣であたふた
していると






焦る様子もなく
茂みから出ていく
紀田………






「あら、裕也じゃない。って事は………もう一人はゆあちゃんかしら?」






バレてしまったなら
仕方ないか………






私も茂みから出て
彼女たちの前に
姿を現した………






「盗み聞きなんて良くないわよ?」







要さんが笑いながら言う






「黙れ」






紀田が要さんを
睨み付ける





「だいたい、お前らの悪巧みは昨日の時点で知ってんだよ。なあ、女将さんと悠斗」






紀田の言葉に
二人の肩が揺れる






「悠斗………一体どういうこと?」






さっきまで笑っていた
要さんの表情が一気に冷める






顔は綺麗なのに
心が酷く歪んでいる






「ち、違うんだ!」






「違わねえだろ。」






「いいわ、悠斗。バレたって問題ないでしょ……こっちにはコレがあるんだから」






そう言って一枚の写真を
手に持ってヒラヒラする






そこに写ってるのは






「女将さんと紀田!?」





写真には紀田が
包丁で女将さんを
刺している現場が
写されていた






「正確には、私の妹でございます」







「そう、それ!妹ってどういうこと?」






女将さんの一言に
昨日からの疑問をぶつける






「私の妹は昔から引きこもりでしてなぁ………俗に言う自殺願望者ゆうやつです」






女将さんは冷静沈着な顔で
淡々と述べる






「双子の妹ゆえ、この宿を担って欲しかったんですけどねぇ、部屋籠ったまま出て来んし、姉の言うこと聞かんで、自分勝手なことばかりして……」






「だから殺したのか?」






紀田が拳を思いきり
握りしめて
女将さんを睨む






「嫌ですねえ……殺してなんかいませんよ…死んでもらったんです」






女将さんがニヤリと笑う






その笑顔に体が
ゾクゾクッと震える





死んでもらったって
どういう意味?
< 188 / 370 >

この作品をシェア

pagetop